ワークライフバランス?

「日々の生活を心豊かにすごしたい」「生きがいを持って生きたい」、そんな気持ちは、以前は定年後や老後に考えたものかも知れません。でも、今は年齢に関わらずそう思うような時代になってきたように感じます。

そのために、仕事一辺倒な仕事人人生をやめて自分の時間を持とうと、「ワークライフバランス」が叫ばれ、「働き方改革」について法律すら作られました。
しかし、それで本当に心豊かになったでしょうか?

残業規制が必要以上に厳しくなり、働きたい人すらも働ける場を失い、自分の時間は会食や飲み会にあてられ、結局、収入は減り交際費が増えた、というようなことになった人も少なくありません。これらは「労働者」のための考え方のようにとらえられていますが、なので経営者も結局、収益が減少したり、従業員のモチベーションが下がったりと、被害者的な制度になってしまいました。

そもそも働き方改革の根源は?

そもそも、国が働き方改革に本格的に取り組み始めたと感じられるのは、2008年、社団法人経済同友会・21世紀の労働市場と働き方委員会が、『21世紀の新しい働き方「ワーク&ライフ インテグレーション」を目指して』と題して、提言がまとめられ、公開された頃からだと思います。

この提言はとても素晴らしい内容だと感じましたが、10年以上経た今でも、それらの内容はあまり実現しておらず、用語も流通していません。それらの要因はいくつかありように思います。少なくとも、この提言をもとに国をあげての「働き方改革」へとつながったことは間違いありませんが、期待されたほどの成果につながっていないのは、「現場の実践力」がともなってこなかったからで、その一つが、言葉としても、「ワーク&ライフ インテグレーション」が「ワークライフバランス」へ変わってしまったことも大きな要因だと考えています。

ワークライフの豊かさはインテグレートしてこそ

欧米では、ワークとライフのバランスを割り切って切り分けることが上手です。そもそも、企業に依存せず自分のスキルを磨き、それらを発揮する場を自ら得ていくという文化ですから、企業も個人もその前提があるから成り立つことです。

日本ではというと、仕事と生活の密接性が高く、その連動性も非常に高いです。生活がうまくいっていない人の多くは仕事もうまくいっていない、仕事がうまくいっていない人は生活にも影響がある。このあたりは心あたりがある方も多いのではないでしょうか。

仕事のために生きているのではなく、生きるために仕事をしているのでもない。働くことを通して社会に貢献し、幸福感や本当の豊かさを感じることを目指すことが、日々の充実感にもつながると考えています。日々の生活が充実していれば仕事も楽しくでき、仕事がハツラツとできている時は生活もイキイキしている。さらに、休みの日に仕事に関するよいアイデアが思い浮かぶ、という経験はありませんか?

これを含めて、働き方改革は、「ワークライフバランス」ではなく、仕事と生活を統合的にとらえ、人生100年時代を楽しんでいく「ワークライフ・インテグレーション」こそが、その本質であると考えています。

自分のパーパスをコアに、企業のパーパスとの整合性にフォーカスし、ワークとライフとともに、そして、企業と個人の共栄を目指して、ワークライフキャリアを積んでいくことが、これからの時代の豊かさへの道だと考えています。