Win-Winの関係

「Win-Win(ウィンウィン)の関係」という言葉を聞きます。自分だけでなく相手も勝つという意味で、双方にメリットがある関係という意味で使われています。

全世界で有名なビジネス書、スティーブン コヴィー氏の著書『7つの習慣』の中で、第4の習慣としてかかげられている「Win-Winを考える」が起源とされてるものですね。

『7つの習慣』では、第1~3の習慣で「私的成功」、第4~6の習慣で「公的成功」、第7の習慣で「継続向上」という構成になっていることはご存じの方も多いでしょう。

これらは、「依存」⇒「自立」⇒「相互依存」という構造であることも語られています。
この「依存」から第1~3の習慣「私的成功」で「自立」を目指すというところは、まさにその通りでこれらを身につけることはとても大事だと考えています。

しかし、「自立」から「相互依存」の第4~6の習慣「公的成功」については、ちょっと待ったです。
その中の一つが「Win-Winを考える」です。

まずは「Win-Win」についてですが、
自分のこと(Win)しか考えず、顧客のことを考えない人は失敗するという意味で説明されていることもありますが、そもそも顧客の利益を考えてないということは論外ですね。なので、そうではなく、それらはパートナー関係において言われているのが一般的です。
これは、対等の立場だけではなく、発注側と下請けのような関係であっても成り立ちます。
結果的にうまくいったときにWin-Winになった、という文脈でも使われますが、そもそもスタート時点で、提案側が「相手のWin」を考えてこそ、「自分のWin」に繋がるという意味で、企画段階でWin-Winになるとか、Win-Winを目指しましょう、という会話がよくあります。

日本では古来からWin-Wnは当たり前?

しかしこれは、人より上を目指して上り詰めていく、いわゆる狩猟民族的な Win-Lose の世界で、いかに自分がWinするかを考えている人たちにとって、両者Winという発想が新鮮であるということなのでしょう。そのような勝ち方も選択肢の一つということで、欧米的な思考でもう一つの勝ち方が Win-Win だということなのだと思います。

日本では古来から、負けて勝つとか、喧嘩両成敗とか、双方一歩引いた奥ゆかしさがありました。商売においても、特に関西では「まけてぇな」と、値引交渉をする時に勝ち負けを言葉にしますが、値引きしてもらったところで、客側は勝ったとは思っているわけではありません。さらに値引きがなくても、買い手側が「ありがとう」と言います。

日本にはこのような「謙譲の美徳」という精神が根付いています。それらもあって、そもそも相手に勝つというWin-Loseを目指していたわけではなく、みんなで一緒にがんばったり、みんなで助け合ったり、みんなで平和に過ごそうというのが基本にあるので、そもそもWin-Winは、新鮮なものではなく当たり前な世界だったはずです。今それらを取り入れようと思ったり新鮮に思うのは、考え方が欧米化してしまっているからかもしれません。

ということで、Win-Winという新しい考え方を取り入れよう、というのではなく、日本古来のよき思考習慣を取り戻せばよいだけだと思うのです。

Win-Win-Winこそ本質

「三方良し」

日本ではさらに、Winは2者ではなく、3番目のWinへの広がりがありました。

近江商人の「三方良し」という言葉が良く知られています。これは「売り手良し、買い手良し、世間良し」という三方みな良しということですね。
これらは、はじめて聞いても良いことだと思えるし、自分について振りかえってみると、それらを意識したことはなくても、現実的には同じように考えていたというようなこともあると思います。

つまり、私たち日本の商売においては、昔から3者のWinを考えていて、それらは受け入れられやすい話であるだけでなく、自然にいつも考えているくらいの考え方であるともいえるかと思います。

第3のWin

ただ 「三方良し」 は適用できる範囲が少し狭いと考えていて、それらとは少し違う「Win-Win-Win」こそが、あるべき姿だと考えています。

Win-Winもいいですが、その2者で目指すことは、どんな内容であれ必ず第3のWinがあるはずということです。2者がWinとなったあかつきには、必ず第3の誰かもそれらの便益があるはずということです。

Win-Winの先には、もう一つのWinが生まれているはずです。それは、そもそも2者の両者が第3のWinを目指したものの場合もあるでしょうし、2者のWinが結果的に第3へのお福分けとなっていることもあるでしょう。

逆にそれらが考えられないようなとき、つまりWin-Winだけ、2者だけで第3に便益がないとき、それは広がりのない、場合によってはまわりをおとしめる内容なのではないかと。それらを「悪だくみ」と呼んでいます。「おぬしも悪じゃのう」は、第3に便益がないWin-Winですね。

そうではなく、第3のWinを目指すと、それらはさらに広がりが生まれます。

Win-Winが広がっていく

Win-Winだとそれで留まってしまいますが、Win-Win-Winだと、1-2-3 が、次には 2-3-4、さらに 3-4-5 というように、Winを伝播していけます。コアとなる2者のWinが、波紋のように広がってくことも考えられます。

そもそもが、「第3のWinを2者が目指すこと」が本質なのではないかと思います。それこそが大我であり、皆のWinは共感を生む源であり、Winは皆の豊かさであり幸福感であるということです。

ビジネスでパートナーシップを組んで企画を考えるとき、第3のWinを意識し、誰を豊かにするのか、誰をハッピーにするのか、どう広げていくのか、そんなことを基本に考える、それが Win-Win-Win です。

さらに1-2-3の関係によって、デルタとなり、デルタネットワークとなって、信頼関係をベースにしたネットワークへと広がっていきます。

これらの続きは、コミュニティでお話していきます。