Win-Winの関係

よく「Win-Win(ウィンウィン)の関係」という言葉を聞きます。自分だけでなく相手も勝つ、双方にメリットがある関係という意味で使われています。

ビジネスにおいて、自分のWinしか考えていなければ失敗するという意味で言われることもありますが、そもそも顧客の利益を考えてないということはまずありえないので、多くの場合は、パートナー関係において使われています。

これは、対等の立場だけではなく、発注側と下請けであっても成り立つ図式です。

結果的にうまくいったときにWin-Winになった、という文脈でも使われますが、そもそもスタート時点で、提案側が「相手のWin」を考えてこそ、「自分のWin」に繋がるという意味で、企画段階でWin-Winを目指しましょう、という会話もよくあるかと思います。

日本では古来からWin-Wnは当たり前?

しかしこれは、人より上を目指して上り詰めていく、いわゆる狩猟民族的なWin-Loseの世界で、いかに自分がWinするかばかりを考えている人たちにとって、両者Winという発想が新鮮であり、そのような勝ち方も選択肢の一つというところからの、欧米的な世界でのもう一つのWinであるように思えます。

日本では古来から、負けて勝つとか、喧嘩両成敗とか、双方一歩引いた奥ゆかしさがありました。商売においても、特に関西では「負けてぇな」と、値引交渉をする時に勝ち負けを言葉にしますが、値引きしてもらったところで、客側は勝ったとは思っているわけではありません。さらに値引きなどなくても、買い手が「ありがとう」と言います。

日本にはこのような「謙譲の美徳」という精神が根付いています。それらもあって、そもそも相手に勝つというWin-Loseを目指していたわけではなく、みんなで一緒にがんばったり、みんなで助け合ったり、みんなで平和に過ごそうというのが基本なので、そもそもWin-Winは、新鮮なものではなく当たり前な世界だったはずです。今こそ取り入れようと思うのは、考え方が欧米化したからかもしれません。

ということで、Win-Winという新しい考え方を取り入れよう、というのではなく、日本古来のよき思考習慣を取り戻せばよいだけだと思うのです。

Win-Win-Winこそ本質

「三方良し」

日本では、そもそもそのWinは2者ではありませんでした。「みんな」という3番目の広がりがありました。

近江商人の「三方良し」という考えは良く知られていますが、「売り手良し、買い手良し、世間良し」という三方がみな良しということです。
これらは当たり前だと思っているのは、私のルーツが滋賀県だからかもしれませんが、でも近江の人でなくても、これはいいよねと思えるのではと思います。

第3のWin

ただ 「三方良し」 は適用できる範囲が少し狭いのではと思います。
これまでの経験と本質を考えると、「Win-Win-Win」こそが、あるべき姿であると考えます。

Win-Winもいいですが、その2者で目指すのは、どんな内容であれ、必ず第3のWinであるはずということです。2者がWinとなったあかつきには、必ず第3の誰かもそれらの便益があるということです。

Win-Winの先には、もう一つのWinが生まれているはずです。それは、そもそも2者の両者が第3のWinを目指したものの場合もあるでしょうし、2者のWinが結果的に第3へのお福分けとなっていることもあるでしょう。

逆にそれらが考えられないようなとき、つまりWin-Winだけで第3に便益がないとき、それはいわゆる「悪だくみ」なのではないかと思います。「おぬしも悪じゃのう」は、第3に便益がないWin-Winですよね。

そうではなく、第3のWinを目指すと、広がりも生まれます。

Win-Winが広がっていく

Win-Winだとそれで留まってしまいますが、Win-Win-Winだと、1-2-3 が、次には 2-3-4、さらに 3-4-5 というように、Winを伝播していけます。コアとなる2者のWinが、波紋のように広がってくことも考えられます。

そもそもが、「第3のWinの広がりを2者が目指すこと」が本質なのではないかと思います。それこそが大我であり、皆のWinは共感を生む源であり、Winは皆の豊かさであり幸福感でありということになります。

ビジネスでパートナーシップを組んで企画を考えるとき、第3のWinを意識し、誰を豊かにするのか、誰をハッピーにするのか、どう広げていくのか、そんなことを基本に考える、それが Win-Win-Win です。